リハビリや通所介護の現場で、歩行車を使う利用者さんを日々見ておられる方は多いと思います。「補助具を使えているから大丈夫」——そう判断したくなる場面もあるはずです。
しかし、補助具の”内側”で体に何が起きているかは、目視だけでは案外つかみきれません。今回は、AI歩行分析を導入することで見えてきた一つのケースを通じて、数値で歩行を捉える意味をご紹介します。
ケースの概要
80代女性、歩行車を使用。腰痛はあるものの歩行時の強い痛みはなく、ご本人は「両足首まわりに力が入らない」と訴えておられました。すくみ足のエピソードもあり、歩行は不安定。転倒歴はゼロですが、転倒への不安は強く、ヒヤリハットは週1回ほど見られました。
分析で浮かび上がった3つの特徴
後方から撮影した歩行動画をAIで解析したところ、目視では言語化しにくい特徴が、数値として明確になりました。
1. 右足で支える時間が短い
左足で支えるフレーム数が109に対し、右足は62。約27%の左右差です。歩行車を握りながらも、右足に体重を預ける不安が「右足を急いで抜く」歩き方を生んでいると考えられます。
2. 肩で大きくバランスを取っている
骨盤の傾きのばらつき(RMS)が1.72°、肩の傾きが3.54°と約2倍。足首や股関節での微調整が難しいぶん、上半身を揺らして代償している状態です。ご本人の「足首に力が入らない」という訴えと、数値が一致しました。
3. 歩幅が一定しない
一歩ごとの幅のばらつき(変動係数)が左右とも19〜20%。歩行リズムの不安定さは、すくみ足とも深く関係しています。
数値が現場にもたらすもの
このケースで重要なのは、AIの数値がご本人の主観を裏づけたことです。「気のせいではなく、実際にこういう特徴が出ています」と示せると、利用者さんもご家族も納得し、リハビリの目標設定が具体的になります。
そして現場目線でいえば、こうした客観的データは——
- 多職種連携の共通言語になる(PT・OT・ケアマネ・ご家族で同じ図を見て話せる)
- 介護計画書やモニタリングの根拠資料として使える
- 4〜6週後の再評価で、取り組みの効果を数値で示せる
といった実務上のメリットにつながります。今回のケースでも、①足首まわりの支持機能向上、②右足への荷重練習、③歩行リズムの再構築、④すくみ足対策、という4本柱のプログラムと再評価指標を、そのままPDFレポートにまとめてお渡ししています。
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